低侵襲治療装置についてのお話
 〜患者さんへの負担が少ない治療を目指して〜

 ○低侵襲治療装置のしくみ
 低侵襲治療が前立腺に働く仕組みは、エネルギーによって前立腺を加熱し、肥大化した前立腺の組織を熱変性によって無害化するというものです。
 熱を発生させるためのエネルギー源は多種多様であり、高周波やレーザーや超音波などさまざまなものがあります。
 これらの機器の性能は年とともに向上していますので、性能の向上した新しい機器を使って治療することをお勧めします。

 ○従来の低侵襲治療装置
 前立腺肥大症の低侵襲治療装置(患者さんへの負担が少ない治療装置)がわが国に導入されるようになってから10年余りがたちますが、当初、夢の医療装置ということで、多くの病院が機器を導入しました。
 しかし、これら初期の装置では、効率的な前立腺へのエネルギー伝達が得られず(つまり性能が不良で)、期待された効果は得られませんでした。
 熱変性には45℃以上の持続的な過熱が必要とされていますが、初期の装置では、これらの温度に満たないものや、超えてもせいぜい50℃〜60℃くらいの加熱しか達成できなかったものばかりだったのです。
 その理由として、温度を高くしようとすると、隣接する直腸や尿道も高温になってしまい安全性を確保できなかったことがあります。
 当時の技術でこれらをクリアしようとするには、莫大な費用をかけるか、あるいは低侵襲をあきらめて高侵襲にするかしかなかったので、安全を確保しながら低侵襲でコストを保つことは難しかったのです。

 ○最新型の低侵襲治療装置とは

 当クリニックにも導入されている新世代の《プロスタトロン・プラクティス》では、『直腸温度をモニターして加熱をコンピューター制御するシステム』と『尿道の冷水での還流』を導入するよって、これまでの問題を克服しました。
 これらの技術革新によって、安全性を確保しつつ前立腺組織を80℃〜88℃まで加熱することが可能になったのです。
 このように80℃以上の加熱を達成した最近の機器としては、マイクロ波高温治療(TUMT)をはじめとして、高温度焦点式超音波治療(HIFU)や尿道内視鏡的穿刺通電治療(TUNA)など数種類があるのみです。
 しかし、これらの高性能機器は、現在のところまだ広く普及するには至っていません。
 その理由として、日本の病院では入院治療をすすめる傾向があること。また、初期の低侵襲治療装置を購入した医師の中には、低侵襲治療に対し良い印象をもっていない人がいる事などがあげられます。


 ○最新型の低侵襲治療装置の効果

 これら最新型の治療装置に比較的早くから注目して治療を手がけている慶応大学付属病院では、《TUMT》新機種の《プロスタトロン・プラクティス》と《HIFU》と《TUNA》の3つの使用経験から、3機種間では治療成績にほぼ差がない、と結論付けています(※文献1)。
 それによれば、4年間の長期観察において、これらの治療を受けた患者さんの8割はまずまず良好な排尿状態を保っており、排尿状態の改善が不十分であったためにその後、前立腺切除手術(TURP)を受けた患者さんは、全体の約2割に過ぎなかった、という成績です。
 これは、従来(旧式)の低侵襲治療装置の成績に比べて各段に良い成績といってよいでしょう。


 ○アメリカでも推奨されている新世代装置
 現在最も新しいガイドラインである『2003年の米国泌尿器科学会前立腺肥大症診療ガイドライン』では、上記3機種の新世代装置のみが紹介されており、従来型の機種はすべて記載から除外されています。
 さらに、3機種の中ではTUMTとTUNAのみが、十分なデータの蓄積があることから『推奨』という一段上の格付けがなされています。

 ○当院がプロスタトロン・プラクティスを導入した理由
プライバシー保護のため顔は隠させていただいてます マイクロ波高温治療(TUMT)の《プロスタトロン・プラクティス》では、治療時の痛みが少なく安心です。
 《HIFU》や《TUNA》は痛みが強いので、入院して腰椎麻酔が必要とされていますが、《TUMT》では、痛みが少ないので無麻酔の外来治療が可能です。
 この点からも、《TUMT》の最近の機器である《プロスタトロン・プラクティス》が《HIFU》や《TUNA》に勝っているといえるでしょう。
 これらの事から、《プロスタトロン・プラクティス》は世界の市場では現在トップシェアを得ており、世界で年間1万例を超える治療が行われているのです。
 また、《TUMT》による治療は健康保険が適用されるため、費用の面でも患者さんの負担は軽減されています。
 治療は1時間ほどで終わり、入院も必要ないため、仕事を長期にわたって休めない方でも治療を受けることができます。
 現在札幌では3台あるのみの装置です。

※文献1:前立腺肥大症の低侵襲性治療. 大東貴志. Medico. Vol.34, No.10, 2003

 
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